January, 2010 のアーカイブ

Dr.パルナサスの鏡

原題:
Imaginarium of Doctor Parnassus, The (パルナサス博士の幻想館)
年度:
2009
製作国:
イギリス/カナダ
配給:
ショウゲート
監督:
テリー・ギリアム
キャスト:
ヒース・レジャー/クリストファー・プラマー/ジョニー・デップ/ジュード・ロウ/コリン・ファレル/リリー・コール/アンドリュー・ガーフィールド/バーン・トロイヤー/トム・ウェイツ
ストーリー
現代のロンドン。「パルナサス博士」率いる移動式見世物小屋の一座。安っぽい大道芸と思いきや、パルナサス氏はかつての悪魔との契約で1000年生きている奇術師。舞台の鏡に入った者は自らの欲望の幻想世界を観ることに。博士の娘ヴァレンティナが16歳になれば悪魔と新しい契約をすることになってるが、そんなとき額に不思議なマークのある青年トニーが一座に加わり・・・。

 

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8
ギリアムさん遊び過ぎでっせ。楽しい映画。どう収拾つけるのが心配なほど散らかってた要素が綺麗に収束。選択に悩み過ちを繰り返すのが人生でありつまり苦行なのだよと。T・ウェイツ似合い過ぎ。そして幻想世界はもっとキモくできたと思うな。H・レジャーには良い遺作になったね。J・デップ前面の宣伝は仕方ないのかなあ。

雑記:

  1. トニー役H・レジャーが撮影半ばで急死。鏡の中の役を3人(デップ、ロー、ファレル)が引継ぎ映画が完成。3人はギャラ全額をレジャーの遺児に寄贈。
  2. エンドクレジット終了後におまけサウンド。
  3. 「バロン」(88)以来、T・ギリアムが脚本担当。ついでにいくつか作曲も(着メロ含む)。
  4. H・レジャーが女性たちを誘う即興文句は半分くらい本当に即興。
  5. 橋の下の首吊り自殺に使われた橋で、後に全く同じやり方でイタリアの銀行員が自殺。

パンズ・ラビリンス

原題:
Laberinto del fauno, El (牧神パンの迷宮)
年度:
2006
製作国:
スペイン/メキシコ
配給:
パラマウント/ショウゲート
監督:
ギレルモ・デル・トロ
キャスト:
セルジ・ロペス/マリベル・ベルドゥ/イバナ・バケロ/ダグ・ジョーンズ/アリアドナ・ヒル
ストーリー
1944年スペイン。内戦終了後もフランコ独裁の圧政下。軍大尉と再婚した母によって山間部の軍司令部に連れられてきた少女オフェリアは、ゲリラ掃討の指揮を執る残忍な継父に馴染めない。幻想の境目のような森の迷宮でオフェリアは牧神パンに出会い、自分が魔法の国の王女の生まれ変わりであることを告げられる。

 

評価
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8
苦手なホラー系の描写が多くて一部我慢しながら観たけど、観て良かった。夢と現の境目をあえてぼかし、心情世界を敢えて現実世界の悲惨さに重ねて巧みに描写。幻想世界でも血と泥にまみれる彼女の姿に心を打たれる。アメリカ映画には観られないだろうラストにもカタルシス。それにしても邦題センスが悪すぎなのが残念。

雑記:

  1. アカデミー外国語映画賞ノミネート。美術賞、撮影賞、メーキャップ賞受賞。その他各国で受賞多数。
  2. ファンタジーと思われ子供づれ家族が大勢。そのため残酷なシーンが多いことをポスターで喚起。
  3. パンとペイルマン(目がないクリーチャー)はD・ジョーンズ二役。現場では唯一のアメリカ人であり唯一のスペイン語非話者。
  4. 英語字幕はG・デル・トロ監督自らが担当。過去に他人に任せた翻訳に不満。
  5. 歌手ビョークは本作に深く感動し、家に帰って1曲作曲。(Pneumonia)
  6. 2匹の虫も「チーチ」と「チョン」という名前でクレジット。「安らかに」とも。

ブタがいた教室

海外タイトル:
School Days with a Pig (国際=ブタがいた学校の日々)
年度:
2008
製作国:
日本
配給:
日活
監督:
前田哲

キャスト:
妻夫木聡/大杉漣/田畑智子/池田成志/ピエール瀧/清水ゆみ

ストーリー
4月。6年2組に新任で赴任した星先生は教室に生後間もない子豚を連れてくる。1年間みんなで育てて最後は食べよう、他の命を犠牲にしている命というものを見つめなおそう、という提案をする。子供たちは手作りの豚小屋を作りPちゃんと名づけ、とても可愛がって育てる。1年が過ぎようとするころ、いよいよPちゃんを食べるのかを決めなければならない・・・。

 
 

評価
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6
初めてこの実話に触れたときほどの感動はなかった。それは、教師としての結論が自分の感覚とずれているからか。議論のシーンの迫力は鬼気迫るものがありとても演技とは思えない。正答がないなかで他人の意見の尊重し、かつ自分の意見を伝える、という技はオトナでも難しい。市場教育はやはり必要。

雑記:

  1. 1990年代前半に大阪の小学校で実際にあった話が基。
  2. 討論のシーンは7つのカメラ使用。台本無し。リハーサル無し。

名もなきアフリカの地で

原題:
Nirgendwo in Afrika (アフリカの名もなき地で)
年度:
2001
製作国:
ドイツ
配給:
ギャガ・コミュニケーションズ
監督:
カロリーヌ・リンク
キャスト:
レア・クルカ/カロリーネ・エケルツ/メラーブ・ニニッゼ
ストーリー
第二次世界大戦直前、祖国ドイツでのナチスの迫害を逃れて英植民地ケニアのロンガイの農場で暮らすことになったユダヤ人一家。ヴァルターとイエッテルの夫婦は慣れぬアフリカでの暮らしに戸惑い、時に諍う。幼い娘レギーナは異国の暮らしに順応し、現地の料理人オウアや子供たちとともにたくましく成長する。

 

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9
良い映画。違いにこそ価値がある。陳腐な箴言のようでいて、人の諍いのほとんどはそれを忘れてしまうことに原因があるのだ。夫婦のすれ違い、言葉の壁、文明差、文化や死生観の違い、そして、同国人なのに「よそ者」として逃げなければならない事実。そんな大人の事情をよそに、レギーナの屈託ないたくましさはどうだ。2人とも撮影現場ではさぞ才覚見せたんだろうな。

雑記:

  1. アカデミー外国語映画賞
  2. 原作シュテファニー・ツヴァイク。自伝。
  3. 監督C・リンクは「ビヨンド・サイレンス」(96)「点子ちゃんとアントン」(00)
  4. ドイツ語、スワヒリ語、英語

アバター

原題:
Avatar (「アバター」(化身))
年度:
2009
製作国:
アメリカ
配給:
20世紀フォックス
監督:
ジェームズ・キャメロン
キャスト:
サム・ワーシントン/ゾーイ・サルダナ/シガニー・ウィーバー/スティーブン・ラング/ミシェル・ロドリゲス/ジョバンニ・リビシ
ストーリー
デジタル3D映画。22世紀。急死した兄の代役として急遽太陽系外の衛星パンドラに送りこまれた下半身不随の元海兵隊ジェイク。パンドラでは青い肌と大きな眼の原住民ナヴィとしての化身(アバター)を神経接続で操り、ナヴィ社会に入る。目的は生態調査だが、貴重な鉱物資源の採取を目論む企業や軍と対立する。ナヴィの信頼を得るうちにジェイクに葛藤が。

 

評価
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8
IMAX 3Dの最良の席で鑑賞。本映画の最大の功績は家庭視聴に押されてた「映画館」に再び足を向かせたこと。技術が新たな地平を築いた。だから勿論ストーリーだけ追えば「ポカホンタスの3D版」だしある意味浮ついた「エコ映画」。ただせっかく作った擬似世界の文化への踏み込みは甘かったのでは。食事や生殖がないし伝説の赤竜をどうやって?続編かな。

雑記:

  1. マイケル・ビーンが大佐役で検討されていたが、S・ウィーバーが既に決まっており、もう一回「エイリアン」(86)か、と思われることを避け変更。
  2. J・キャメロン監督は「タイタニック」(97)直後に本映画を撮るつもりだったが当時の特撮技術の見積もりで4億ドルの制作費。どのスタジオも予算組めず断念。本作は結局推定制作費2.8億ドルで史上最高。
  3. アバターは眉があり5本指。ナヴィは眉がなく4本指。
  4. ナヴィの言葉は言語学者ポール・フロマーが創作。1000ほどの「発音しやすい」単語が作られた。
  5. タイ語で海兵隊を表す単語は「Navi」。従ってタイではジェイクはNaviからNaviになった。
  6. 特殊効果スタジオの「二強」WETAとILMが共同制作した初の映画。

猛烈ロック教師 (Rock School)

原題:
Rock School (ロック・スクール)
年度:
2005
製作国:
アメリカ
配給:
ソニー・ミュージックエンタテインメント
監督:
ドン・アーゴット
キャスト:
ポール・グリーン他
ストーリー
ドキュメンタリー。フィラデルフィアで9~17歳の少年少女を対象に、「ロックの学校」を運営する元ミュージシャンのポール・グリーン。本当のロック魂を身につけ、一流のロックスターになる為スパルタ式の厳しい指導。生徒たちもそれぞれの事情でロックを学ぶ。目標はあの伝説ミュージシャン、ザッパのフェスティバル出場だ。

 

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6
言うほどスパルタでもクレイジーでもなかったと思う。ロック好き熱血漢が大スターになれなかった夢を子供たちに託す、という割とよくある話では。演奏の上達っぷり(特にギターソロ)は本当に素晴らしい。監督の立ち位置が不明で若干不安。もの珍しいネタについての単なる密着取材に見えなくもない。ザッパネイルの様子はそれなりに感動。

雑記:

  1. 日本未公開
  2. 旧東ドイツ地域のBad Doberanで開催されるザッパネイル(Zappanale)は旧共産圏の東ドイツでザッパの音楽が禁止されていたことに由来。
  3. P・グリーンの教育手法には賛否両論。
  4. 「スクール・オブ・ロック」(03)はこの学校をモデルに
  5. “Paul Green School of Rock”は全米各地に分校開設中

みなさん、さようなら

原題:
Invasions barbares, Les (蛮族侵入)
年度:
2003
製作国:
カナダ/フランス
配給:
コムストック
監督:
ドゥニ・アルカン
キャスト:
レミ・ジラール/ステファン・ルソー/マリー・ジョゼ・クローズ/ドロテ・ベリマン/ピエール・キュルジ/イヴ・ジャック/ルイーズ・ポルタル
ストーリー
ロンドンでせわしく働く証券ディーラーのセバスチャンは、モントリオールの母からの電話で急遽しぶしぶ帰省。父レミの病状が悪化したというのだ。女グセが悪く母に迷惑をかけてきた父を軽蔑していたセバスチャンだが父が末期ガンで余命僅かだと知ると、父の望む最期を演出しようとする。病室を改造しかつての友人を呼び、、、。

 

評価
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8
軽妙洒脱というのだろうか。一人の男の静かな死をそばに置きながらゆっくりと進む展開が良い。随所に出る監督(?)の歴史認識の会話が旧き良き左派の栄光を見るようで良かった。資本主義の結実のようなスワップ取引が理解できない社会主義者の父の姿、そしてそれが「滅びる」というモチーフなど、さりげなく仕込まれてる。

雑記:

  1. アカデミー外国語映画賞。
  2. D・アルカン監督は「アメリカ帝国の滅亡」(86)。本作はその続編的位置づけ。続編の上記賞受賞は初。
  3. 脚本執筆中に911テロ。「蛮族侵入」のテーマなので差し挟む。
  4. 病院の労働組合の組合員にD・アルカン監督がカメオ。上着背中には「Directeur」(監督)
  5. セザールの「最優秀フランス語映画賞」。カナダ映画の同賞受賞は初。

ビン・ラディンを探して中東アジアのテロ最前線に突撃! (Where in the World Is Osama Bin Laden?)

原題:
Where in the World Is Osama Bin Laden? (オサマ・ビンラディンはいったいどこへ?)
年度:
2008
製作国:
アメリカ
配給:
ソニー・ミュージックエンタテインメント
監督:
モーガン・スパーロック
キャスト:
モーガン・スパーロック他
ストーリー
ドキュメンタリー。「スーパーサイズ・ミー」の監督スパーロックは、生まれてくる我が子にとって何が危険かを考えた。いろいろあるがアルカイダを率いるビンラディンではないかと結論。彼を探しに出かけることに。エジプト、モロッコ、イスラエル、サウジ、そしてアフガニスタンと、彼ゆかりの地を渡り消息を探すが、行く先々で「普通の人々」の嫌米論を聞くことになる・・・。

 

評価
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6
「コメディを装い社会問題に切り込む」確信犯的パフォーマンスだが、「イスラムへの恐怖はアメリカ人自身の幻想」という結論はアメリカ人には意味のある結論(テロとの戦争、などという政府の詭弁を信じてる人に意味があるとして)。イスラムやユダヤの「普通の」人々の普通さが実は伝わってこなかった。恣意的では。

雑記:

  1. 日本未公開
  2. サンダンス映画祭で上映。メルボルン国際映画祭最人気ドキュメンタリー賞
  3. スパーロック監督は、「スーパーサイズ・ミー」(04)と同様に「30日間何かをやり続ける」という企画番組「30 DAYS」を企画・製作している。

シティ・オブ・ゴッド

原題:
Cidade de Deus (神の街)
年度:
2002
製作国:
ブラジル
配給:
アスミック・エース
監督:
フェルナンド・メイレレス
キャスト:
アレシャンドレ・ロドリゲス/レアンドロ・フィルミノ・ダ・オラ/セウ・ジョルジ/アリシー・ブラガ
ストーリー
華やかなリオデジャネイロの裏庭の掃き溜めのようなスラム「神の街」。少年ギャング団が幅を利かし、暴力・強盗・殺人は日常茶飯事。カメラマンを夢見るブスカペ少年もそうした環境で育ってゆく。ギャングのボスを目指すダディーニョ(「リトル・ダイス」)少年も次々を悪事をこなし組織でのし上がり、やがてジェペケーノ(「リトル・ゼ」)となって街に君臨する。殺人とハードドラッグと汚職に染まったこの街でブスカペはたくましくしたたかに生き抜く。

 

評価
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9
演出で映画はこうまで楽しくなるものか、と。冒頭の包丁に続く「トリ物」からぐいと見せつけ、タランティーノばりの洗練された脚本と多彩なカメラ。そして映像美。パンパン人が死ぬのになんだこの妙な爽快感は。アクの強さを手際良く調理し、だけど決して素材の重みと深みを消さない、という名演出。

雑記:

  1. キャストはほぼシロウト。ブスカペ役A・ロドリゲスもリトル・ゼ役L・フィルミノも実際に「神の街」に暮らしていた。
  2. 父に叱られて殴られる兄を見て思わず漏らす笑いは脚本になく、そのまま使った
  3. 「お湯のシャワーを浴びたことない」というくだりは、撮影休憩中に自分のリアルな経験を話しているだけ。
  4. 撮影場所は「神の街」ではなく近くの似た街。神の街は相変わらず危険すぎる。
  5. リトル・ゼに脅される2人の少年ギャングの怯えて泣く演技は、歯の痛みを思い出させている

命の源“水”を大企業が独占 (Flow: For Love of Water)

原題:
Flow: For Love of Water (流れ: 水への愛のために)
年度:
2008
製作国:
アメリカ
配給:
ソニー・ミュージックエンタテインメント
監督:
イレーナ・サリーナ
キャスト:
モード・バーロウ/シェリー・ブライム他
ストーリー
ドキュメンタリー。多くの国での淡水供給事業の民営化がもたらす悲惨な現実を描く。スエズやヴィヴェンティと言った世界の水メジャーたちは地球全体で循環されるべき水の「取水権」を購入し、企業論理に基づき水を販売。貧しい人は結局買えず、汚水を飲み疫病が蔓延。世界銀行の融資先も「世界水会議」も水メジャーに抑えられる実態。

 

評価
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9
2038年にアフリカで水を巡って戦争が勃発した、という未来視点の「歴史書」を読んだことを思い出す。現実がそれに近づいている。グローバル資本主義というやつはついに命の源泉たる水までも商品化して切り売りすることを許した。「太陽は誰の物でもない。水もそうだ」が印象的。何故未公開?

雑記:

  1. 日本未公開
  2. ムンバイ国際映画祭最優秀批評家賞。サンダンス映画祭でも上映。
  3. 映画の公式サイトでは世界人権宣言に水利権の阻止と全人類の淡水アクセスを権利化する条項追加の署名ページ
  4. 2008年12月、世界人権宣言調印60周年を記念して本作が国連で上映。2万人の署名を提出。