December, 2009 のアーカイブ

くたばれ!ハリウッド

原題:
Kid Stays in the Picture, The (若造は映画に残る)
年度:
2002
製作国:
アメリカ
配給:
アミューズピクチャーズ
監督:
ブレット・モーゲン/ナネット・バースタイン
キャスト:
ロバート・エヴァンズ/ジャック・ニコルソン/ロマン・ポランスキー
ストーリー
1960-70年代のパラマウント映画で多くの名作を生み出したプロデューサー、ロバート・エヴァンズの映画半生。子役で注目されてから十数年、ビジネスの世界にいたエヴァンズはD・ザナック夫人とパラマウントによって映画界に引き戻される。プロデューサーこそ映画の肝、と確信し俳優を捨ててプロデューサーへ。「ある愛の詩」で見出したA・マッグローとは夫婦になり人生を謳歌するように見えたが。。。

 

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7
初めは自慢話が多いなあと思いながら観ていたがそれも演出だと気づく。本人の語りが言いようもないリアルを生む。知っていたつもりだけど映画はPのものなのだなあ、監督やましてやキャストではなく。これが本当なら「ゴッドファーザー」はコッポラじゃないのか・・。ちょいショック。そして、自伝の映画化に出演するエヴァンズ、すげえね。

雑記:

  1. 「ローズマリーの赤ちゃん」「ある愛の詩」「ゴッドファーザー」「チャイナタウン」「コットンクラブ」
  2. 原作、ナレーターがR・エヴァンズ。
  3. 「パラマウントで35年以上の現役プロデューサーは彼だけ」というクレジットがあるがA・C・ライルズがいる。
  4. 37映画のシーンを映像で使い、その他22映画に言及

誘拐されたメディア王の令嬢 その驚くべき変貌 (Guerrilla: The Taking of Patty Hearst)

原題:
Neverland: The Rise and Fall of the Symbionese Liberation Army (ネバーランド: 共生解放軍の栄光と凋落)
年度:
2004
製作国:
アメリカ
配給:
ソニー・ミュージックエンタテインメント
監督:
ロバート・ストーン
キャスト:
パトリシア・ハースト/ラス・リトル/マイケル・ボーティン/ロナルド・レーガン
ストーリー
ドキュメンタリー。全米を震撼させた1974年の「パティ・ハースト誘拐事件」の顛末を追う。新聞王ランドルフ・ハーストの三女パトリシアは、共生解放軍と名乗る左翼テロリスト集団に誘拐される。ベトナム戦後のアメリカ政府の欺瞞に疑問を感じていた秀才たちが結成した小規模の集団だったが、釈放の条件はまるで義賊のような内容。さらにパティ自身が次第に変貌していく。

 

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9
何が驚きってこんな強烈な事件について全く知識がなかったこと。パティの変遷ぶりにはただ驚くしかないが、その印象も巧みな「洗脳」のようなものなのかもね。ベトナムのトラウマを引きずるアメリカ、安保闘争の日本、、どちらも「聡明で青い若者」の武勇伝では同じ。犯人の要求を飲んだり大々的に経過を報道していたりと今ではあり得ないけど、それも含めていろいろ考えさせられる映画。

雑記:

  1. 日本未公開
  2. アメリカでは未レーティング作品。公開時タイトルは「Neverland・・・」でDVDタイトルが「Guerrilla・・・」(「ゲリラ: パティ・ハースト誘拐」)
  3. ストックホルム症候群は自己欺瞞的心理操作。ゆえに解放後は犯人を憎悪することになる。
  4. 当初は懲役35年の判決。しかしR・レーガン州知事やジョン・ウェインらの嘆願によって7年に減刑。さらにカーターが恩赦。
  5. パティはその後警官と結婚。ジョン・ウォーターズ映画の常連脇役。

キャピタリズム/マネーは踊る

原題:
Capitalism: A Love Story (資本主義: ある愛の物語)
年度:
2009
製作国:
アメリカ
配給:
ショウゲート
監督:
マイケル・ムーア
キャスト:
マイケル・ムーア
ストーリー
サブプライム問題や金融破綻などで資本主義の綻びが見えてきた。毎回過激な手法で社会問題に鋭く切り込むムーア監督が、今回は「資本主義」をターゲットに、縦横無尽に持論を展開。家を差し押さえられる人々、突然レイオフされる工場労働者たち、、、その一方で高給を食むウォール街。政治もゴールドマンサックスに乗っ取られる現実。人々よ今こそ団結だ。

 

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7
M・ムーア氏にも疲れが出てきたか?突撃敢行型の取材スタイルは(警戒されて)奮わず?ただ古今東西の映像ソースから紡がれるムーアの手馴れた料理手法は健在。残念なのは対象がいつの間にアメリカに限定されていたこと。「では社会主義を復活させるのか」という疑問に答えていないこと。さらに「民主主義との両立」にも踏み込んでない。

雑記:

  1. 初めブッシュ再選をテーマの「華氏911」の(04)の続きとして企画されたが2008年の金融危機と金融救済法案が通ったことを受けてテーマを変えた。
  2. デトロイトのプレミアはGM本社のビルで行われた。初めムーア監督は入館を拒否された。
  3. 「ワシントン州ベリングトン」の家族の話が出てくるが、恐らく「ベリンガム」の地名ミス。

メゾン・ド・ヒミコ

海外タイトル:
Maison de Himiko, La (国際=ヒミコの家)
年度:
2005
製作国:
日本
配給:
アスミック・エース
監督:
犬童一心

キャスト:
オダギリジョー/柴咲コウ/田中泯/西島秀俊

ストーリー
ゲイの告白をした上に家族を飛び出した父。その心労がもとで病死した母。塗装会社に勤める沙織は借金を負っている上に孤独。そんななか父の恋人だという青年が現れ、父が末期ガンだという。父「ヒミコ」はゲイ専門の老人ホームを運営しており、その手伝いに来ないかという。老人ホーム「メゾン・ド・ヒミコ」での奇妙な生活が始まる。

 
 

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8
柴崎コウの「触りたいところ、ないんでしょう」という脚本のすごさもさることながらオダギリジョーの妙な色気が良い。役者で魅せる映画。ゲイ、老い、病、死、、、尖った設定が目白押しなのにどこかフワッとした展開が実にアート。そのテーマに反して考えさせられる映画というよりは見せる映画だと思った。

雑記:

  1. 大島弓子の「つるばらつるばら」にマニラにある同性愛者老人ホームの話が着想
  2. 実際のゲイも複数出演

ステロイドはアメリカンドリームの副作用 (Bigger, Stronger, Faster*)

原題:
Bigger, Stronger, Faster* (よりデカく、より強く、より速く)
年度:
2008
製作国:
アメリカ
配給:
ソニー・ミュージックエンタテインメント
監督:
クリス・ベル
キャスト:
クリス・ベル/マイク・ベル/マーク・ベル/ハンク・アーロン
ストーリー
ドキュメンタリー。大リーグ、ボディービルやスプリント界などといったスポーツ選手に留まらず、一般人でもステロイドを使って筋肉隆々にする国アメリカ。副作用の危険も指摘されるが人々はマッチョな男たちに「アメリカン・ヒーロー」を感じ喝采を浴びせる社会。プロレスとリフティングの世界に生きる自身の兄と弟があけすけにステロイドを使う様を撮るクリスは、アメリカ的であることの意味を問いかける。

 

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6
ステロイドが象徴するアメリカ的強迫観念はもはや「勝ち」こそが「価値」であるという国家的病魔なのだろうな・・・。一方でカトリック的な保守主義も原理主義的な教条主義も持ち合わせるのがある意味でアメリカの奥深さなのだろうけど・・・。 世界最強の軍備に透けて見えるコンプレックスがいかにショボいものか、早く上層が気づくべきだと思う。ドキュメンタリーとしては面白かったです。

雑記:

  1. 日本未公開
  2. 原題末尾の「*」は、ドーピングで陽性反応が出た記録に付けられる国際標準記号。
  3. 兄マイクは映画公開後の2008年12月に37歳で死去。
  4. 映画中で16歳からのステロイド使用を告白したクリスチャン・ボーヴィングは、映画公開後契約を切られた。

イングロリアス・バスターズ

原題:
Inglorious Bastards (不名誉な野郎ども)
年度:
2009
製作国:
アメリカ
配給:
東宝東和
監督:
クエンティン・タランティーノ
キャスト:
ブラッド・ピット/メラニー・ロラン/クリストフ・ヴァルツ/イーライ・ロス/マイケル・ファスベンダー/ダイアン・クルーガー/ダニエル・ブリュール/ティル・シュバイガー
ストーリー
第二次世界大戦時のナチス占領下のパリ。ランダ大佐率いるナチスの「ユダヤ狩り」で両親を虐殺された過去を持つショシャナは名前を変え映画館を運営。復讐の機を伺っていた。一方、連合国側のナチス殲滅の為の秘密組織「バスターズ」では、ナチに苦しめられたメンバーたちが苛烈なナチ狩りを遂行。ナチに恐れらている。ショシャナの映画館にナチス幹部が大挙することになり・・・。

 

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9
またもタランティーノ節炸裂。もう完全に「合わんヤツは観んでいい」スタイル全開で気持ち良し。わざわざこの微妙な題材を手にとってこねくり回してこんな痛快な作品ができちゃいました。役者の演技際立ち脚本の良さが隠れるくらい。ブラピも笑わせてくれる。熟成感の有る映画なので再見したい。多言語使いのC・ヴァルツ何者?(演技もうまい)

雑記:

  1. 「地獄のバスターズ」(78/E・G・カステラッリ監督)から着想
  2. ランダ大佐役C・ヴァルツはカンヌ主演男優賞。アカデミー助演男優賞。彼にとって初のアメリカ映画。英独仏語堪能。伊語も多少。
  3. タランティーノは「キル・ビル」(03)の前に本作の脚本を書き始めていたが、なかなか終わらず。
  4. 「第1章」の副題「昔むかし、ナチ占領下のフランスで」は映画タイトルとして初め想定
  5. 女優ハンメルマルク役は初めナスターシャ・キンスキーを想定。タランティーノがドイツまで飛んだが交渉不成立。
  6. ランダ大佐の「100万のうち9-9-9-point-9-9-9」という表現はドイツ語的。英語なら「9-9-9-comma-9-9-9」。
  7. 「キング・コング」はヒトラーが好きだった映画として有名。

ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない

海外タイトル:
-
年度:
2009
製作国:
日本
配給:
アスミック・エース
監督:
佐藤祐市

キャスト:
小池徹平/マイコ/田中圭/品川祐/池田鉄洋/中村靖日/千葉雅子/田辺誠一

ストーリー
高校を中退し8年間ニートの「マ男(真男)」。母の突然の死で奮起し、プログラマとしてやっとつかんだ就職先は大手IT企業からの孫請けの受託制作会社。定時など都市伝説、と嘯くリーダー阿部のもとでの過酷な「半奴隷的」労働環境。人権?労基法?下請法?なにそれおいしいの? 「ブラック会社」での限界すれすれの日々。

 
 

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5
どうということもなくサラッと終了。脚本がスレッドではこんなものでしょう。とりあえず自分は未経験な世界だけど受託の孫請けの現場などでは笑えないのではないか。映画を映像芸術として捉えがちな古いタイプの映画好きとしてはキャプション、ましてや掲示板の文章のシーンがあること自体違和感。そして小池徹平のニートはムリあるのでは。

雑記:

  1. 2ちゃんねるの書き込みから生まれた黒井勇人のスレッド文学。「現代の蟹工船」とも
  2. エンドクレジット後に品川相方の庄司が友情出演。
  3. クライマックスのデスマのシーンの撮影中は撮影自体が不眠不休のデスマだったとか。

海を飛ぶ夢

原題:
Mar Adentro (裡なる海)
年度:
2004
製作国:
スペイン
配給:
東宝東和
監督:
アレハンドロ・アメナーバル
キャスト:
ハビエル・バルデム/ベレン・ルエダ/ロラ・ドゥエニャス/クララ・セグラ/マベル・リベラ
ストーリー
海での事故により四肢麻痺となり30年弱になるラモン。ラ・コルーニャの自宅のベッド。家族の献身的な助力に支えられながら動かぬ体で生を見つめ続けた彼は死を決意。弁護士のフリアは彼の尊厳死を裁判で勝ち取るために彼の話を聞き、彼の「生き方」に次第に惹かれる。

 

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10
魂が揺さぶられた。J・バルデムの強烈な演技に舌を巻いた。カトリック社会での尊厳死という正答のない重いテーマを濃厚に丁寧に描く。キャストそれぞれの主張は全て等しく個人の死生観。逃げずに真正面から描き対立軸も置かなかった。それがリアルな社会であり、身近にある死の本質。

雑記:

  1. アカデミー外国語映画賞。ベネチア映画祭主演男優賞。その他各国で受賞。
  2. 実話に基づく。
  3. 3ヶ月前に写真公開。J・バルデムのメークに慣れてもらうため。メークは5時間かかってた
  4. 音楽もA・アメナーバル

古き良きアメリカ 理想の結婚に隠された真実 (51 Birch Street)

原題:
51 Birch Street (51番バーチ通り)
年度:
2005
製作国:
アメリカ
配給:
ソニー・ミュージックエンタテインメント
監督:
ダグ・ブロック
キャスト:
マイク・ブロック/キャロル・ブロック/エレン・ブロック/カレン・ブロック/ダグ・ブロック
ストーリー
ドキュメンタリー。映像作家ダグの両親は金婚式を迎え一見して幸福な家庭。個人用に記録していたダグが、直後に母ミナが急死したことで事態が急変。父マイクはミナの死からわずか3ヶ月で長年の秘書だったキャロル(キティ)と再婚。長年住んだNYの家を売りフロリダに移住するという。展開に戸惑うダグ含む子供たち3名だったが、母の数十年に及ぶ日記が発見されたことで長年の結婚生活の闇が明らかになる。

 

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7
新聞の投書欄のような赤裸々な、しかし平凡すぎる家庭の真実が描かれているのだが、普通のドキュメンタリーにさえ付きものの虚飾のないナマの生活がこれなのだ。人間とはつくづく社会的な動物であり立場と状況によって他人に見せる部分をコントロールしながら生きる。一見ホームビデオの延長でしかないが、本作が劇場公開・DVD化までされたという事実こそが何よりも重い。

雑記:

  1. 日本未公開
  2. フロリダで新妻と暮らしていた父マイクは2009年8月に他界。映画公開による周囲の目も一切気にせず「息子を信頼」。
  3. ダグの次作は本作の続編。自分の娘ルーシーがメイン。マイクも主要な役割。

戦場のピアニスト

原題:
Pianist, The (ピアニスト)
年度:
2002
製作国:
フランス/ドイツ/ポーランド/イギリス
配給:
アミューズピクチャーズ
監督:
ロマン・ポランスキー
キャスト:
エイドリアン・ブロディ/トーマス・クレッチマン/フランク・フィンレイ
ストーリー
実体験の回想録を基にした話。1939年のワルシャワ。ナチスドイツの攻撃を受けたラジオ放送局で演奏中だったユダヤ人ピアニストのウワディク・シュピルマンは一家とともにゲットーへの移住を強制される。毎日が生きるか死ぬかの過酷な暮らし。ポーランド人のなかにもナチスへの協力者が現れるなかシュピルマン一家は離散の危機に。

 

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9
ポランスキーの魂が乗った名作。切なくて感動的。収容所ではなく「よりリアルに根ざした」無意味な虐待と虐殺。A・ブロディの素晴らしい演技。生きることと食べることをひたすら動物的に追求する描写のはずなのに、どんなピアニストの映画よりも芸術感あふれる後半の力強さはどうだ。せっかく弾切れ→わざわざ弾込めてズドン、キャラメル6等分、缶があるのに開かない、などの演出ひとつひとつが丁寧でしつこくない。人に勧めたい映画。

雑記:

  1. R・ポランスキー監督も両親が収容所。自身も幼少期はナチス占領下のポーランド。
  2. カンヌ・パルムドール、ボストン映画批評家賞、アカデミー3部門。
  3. A・ブロディは6週間にわたるダイエットで14kg落とした。
  4. クラコフでロケ地を探していたとき、R・ポランスキー一家をかつて助けた男性に偶然会った
  5. A・ブロディは欠乏感を味わうため、アパートを引き払い、車を売り、テレビを観なかった
  6. 仏セザール賞も受賞。一言もフランス語が話されない映画で初。
  7. オープニングには一切クレジット無し。