November, 2009 のアーカイブ

もし南北戦争で南軍が勝っていたら? (C.S.A.: The Confederate States of America)

原題:
C.S.A.: The Confederate States of America (C.S.A.:アメリカ連合国)
年度:
2004
製作国:
アメリカ
配給:
ソニー・ミュージックエンタテインメント
監督:
ケヴィン・ウィルモット
キャスト:
グレッグ・カーシュ/レニー・パトリック/モリー・グラハム他
ストーリー
実際には合衆国(USA)側が勝利した19世紀のアメリカ南北戦争で仮に連合国(CSA)側が勝利していたら、という設定でイギリスの放送局が「アメリカ近代史」を描く番組、という体裁の偽ドキュメンタリー。リンカーンはカナダに亡命して客死。奴隷制度や人種差別は現在にまで残り、第二次大戦中はヒトラーとの協定が話し合われる。番組の合間には奴隷グッズ等の「CM」も放送。

 

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9
これは面白い。偽ドキュメンタリーの体裁を取っていながらも随所に皮肉たっぷりな史実を入れているのがすごい。結局世界の覇権国として君臨しないではいられない悲しいDNA。今も陰湿な形で残る人種差別を誰も隠さないだけ、、など、「アメリカ的なもの」の矛盾を鋭くエグる。「コットンの壁」には唸った。これはアメリカ人の反応が知りたいなあ。

雑記:

  1. 日本未公開
  2. 番組のCMで紹介されている差別的な商品は、実際にかつてアメリカにあったものがほとんど。
  3. 何度も登場するCSAの「国旗」は、戦闘旗
  4. クレジットにスパイク・リーの名前も

ロスト・イン・トランスレーション

原題:
Lost in Translation (翻訳漏れ)
年度:
2003
製作国:
アメリカ
配給:
東北新社
監督:
ソフィア・コッポラ
キャスト:
ビル・マーレイ/スカーレット・ヨハンソン/ジョバンニ・リビシ/アンナ・ファリス/マシュー南
ストーリー
落ち目のアクション俳優ボブは、ウイスキーの撮影のために東京に着く。言葉も文化もわからないなかでもどかしい思い。一方ミュージシャンの夫に同行して来日したシャーロット。夫はいつも仕事で忙しそう。ボブとシャーロットは同じホテルに滞在し、同じ不眠症を抱える。二人は出会い言葉を交わす。異国の大都市の孤独感を共有する。

 

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8
このユルさはアメリカ映画とは思えない。なんだかハッキリしない展開のワビサビ感は、良い意味ですごい表現力だと思う。「異国」ではない立場でしか鑑賞できないので意図とは異なるだろうけど過度な偏向があるわけでもないし。あの孤独感も、若さが象徴する人生の焦りも、多くの人が共感するのでは。B・マーレイの抑制の効いた演技素晴らしい。

雑記:

  1. S・コッポラ監督が脚本。アカデミー脚本賞(オリジナル)。
  2. 電話のみ登場のボブの妻の声は本作の衣装デザイン担当のナンシー・スタイナー
  3. 当初からB・マーレイを想定して脚本書いた。「断られてたら映画を作らなかった」
  4. S・コッポラの父F・F・コッポラは、実際にサントリーのCMに出演していた。1970年代に黒澤明と共演。
  5. ボブとシャーロットは自己紹介していない。
  6. 南米も中国もイスラエルでもタイトルの意味は「Lost in Tokyo」。つまり本当のlost in translation。
  7. 新宿の雑踏でのシーンの出来事はなんとアドリブ。

アメリカの映倫 その秘密を暴け! (This Film Is Not Yet Rated)

原題:
This Film Is Not Yet Rated (本映画は未レーティング)
年度:
2006
製作国:
アメリカ
配給:
ソニー・ミュージックエンタテインメント
監督:
カービー・ディック
キャスト:
ジャック・ヴァレンティ/キンバリー・ピアース/ジョン・ウォーターズ/カービー・ディック/ジョン・ルイス
ストーリー
アメリカで製作される映画を審査し、「G」「PG」「PG-13」「R」「NC-17」の5段階に格付け(レーティング)する独占的な組織「アメリカ映画業協会(MPAA)」の不明瞭なシステムや秘密主義を批判するドキュメンタリー。NC-17(“18禁”)にレーティングされた映画は興行面での相当なハンディキャップがある現実のなか、MPAAの審査基準や審査員たちの情報は一切秘匿されている。K・ディックが探偵を雇い、審査員の正体を暴露していく。

 

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8
良質ドキュメンタリー。製作者の意図も編集の問題意識もよく伝わってきて、観てると自然に義侠心が。惜しかったのは、MPAAは彼らなりの理屈と正義感があることだろうけれど、興行側(劇場)や配給がこの問題をどう捉えているかに踏み込んでいなかった点。むしろ問題は、妙なリスク回避の思想で際どい作品を放映しない流通側の方にあるのではないか。 ところで探偵は素顔を晒しちゃって大丈夫?

雑記:

  1. 日本未公開
  2. この映画自体がNC-17にレーティングされたため、K・ディックはレーティング拒否。
  3. エンドクレジットの「卑語数カウント」で「アップルパイとの性交:1」「アニメでの性交表現:15」などw

絶対禁欲教育に挑んだ女子高生 (The Education of Shelby Knox)

原題:
Education of Shelby Knox, The (シェルビー・ノックスの教育)
年度:
2005
製作国:
アメリカ
配給:
ソニー・ミュージックエンタテインメント
監督:
マリオン・リップシューツ/ローズ・ローゼンブラット
キャスト:
シェルビー・ノックス他
ストーリー
性に保守的な町で性教育を実現しようと女子高生が奮闘するドキュメンタリー。テキサス州ラボック。キリスト教原理主義者たる福音派が多数を占めるこの町では「絶対禁欲教育」が主流。学校での性教育はなく、避妊も教えない。当然、婚前交渉禁止。だけど他にやることもないので10代の妊娠や性病が全米一の水準。女子高生シェルビー・ノックスは青年会とともに性教育の意義を説きまわる。

 

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7
あの偏狭(というより偏屈)な人々を観ているとアメリカ(少なくとも共和党政権下)が自由の国だなんて随分疑わしいし、特に宗教の自由などないのかなと思う。勿論バイブルベルトの特殊要因なのだろうけど、リベラルor保守、なんて極端に走り過ぎに感じてしまう。シェルビーの活動とこのドキュメンタリーの距離感がいまいちつかめなかったけど、ほぼ事実なんだろな。

雑記:

  1. 日本未公開
  2. シェルビー・ノックスはその後も同様の活動を続けている
  3. ディクシー・チックスのボーカル、ナタリー・メインズはラボック出身でこの映画に共感
  4. サンダンス映画祭などで多数受賞

ツォツィ

原題:
Tsotsi (ツォツィ:「悪漢」)
年度:
2005
製作国:
イギリス/南アフリカ
配給:
日活/インターフィルム
監督:
ギャビン・フッド
キャスト:
モツスィ・マッハーノ/ゼンゾ・ンゴーベ/ZOLA/ジェリー・モフケン/プレスリー・チュエニヤハエ/テリー・ペート/ケネス・ンコースィ
ストーリー
南アフリカ・ヨハネスブルクのスラム。窃盗や強盗を繰り返すグループを率いるツォツィ(「悪漢」)。本当の名前は捨て、バクチに明け暮れる。ある日仲間と諍って飛び出した勢いで裕福な家から車を盗み出し街から逃げようとするが、車の中に生後数ヶ月の赤ん坊が乗っていた。仕方なく周りに隠しながら育て始める。ツォツィは命の尊さに触れ、次第に人間らしさを取り戻す。

 

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8
切ない話。遠景の高層ビルの手前にだだっ広く広がるスラム街の光景、そのときの空のなんと美しいことか。原作はアパルトヘイトの悲惨さを訴えているようだが、映画も充分考えさせられた。HIVの誤解、命の軽重、咎なき格差。拳銃で脅しながら「乳をやれ」という暴力と優しさの不器用さ。南アフリカの映画を他にも見てみよう。人生の糧になりそうだ。

雑記:

  1. アカデミー外国語映画賞。その他各国で受賞多数
  2. 別のエンディングがDVDに収録。
  3. 原作はアソル・フガード。ただし設定は1960年代でアパルトヘイト色が強い。
  4. 日本ではR-15だが、ティーン向け試写の為日活はレーティング変更を要請。映倫は拒否。
  5. 言語は南部ソト語、アフリカーンス語、ズールー語など。南アフリカ特有の「ツォツィタール」という混声言語も。

マイケル・ジャクソン THIS IS IT

原題:
This is It (これがそれだ)
年度:
2009
製作国:
アメリカ
配給:
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
監督:
ケニー・オルテガ
キャスト:
マイケル・ジャクソン他
ストーリー
2009年6月に急逝した”キング・オブ・ポップ”マイケル・ジャクソン。ロンドンで予定していたコンサート「THIS IS IT」のリハーサルの姿を、ステージのクリエイティブ・パートナーを務めていたK・オルテガが映画化。舞台裏での彼の姿を中心に、未完のライブにかける情熱と真摯さ。

 

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8
マイケル・・・。死してなおというよりも死して「より」輝く典型のような人だ。彼の完璧主義が随所に見え晩年の醜聞はどこかに消えてなくなった。キングオブポップの面目躍如。K・オルテガはさぞ無念だっただろうが本作の大ヒットが慰めになったのでは。こうやって不滅のスターがまた生み出された。この奇妙な現象はホント説明できない。

雑記:

  1. 元々マイケルの個人ライブラリー用に撮られていた映像
  2. 1983年にポール・アンカとマイケルの共作で「I Never Heard」という楽曲が作られ、それが「This Is It」と改題されてリリリースされたのが表題曲

ゆきゆきて、神軍

海外タイトル:
Emperor’s Naked Army Marches On, The  (国際=裸の皇軍の行進)
年度:
1987
製作国:
日本
配給:
疾走プロ
監督:
原一男

キャスト:
奥崎謙三

ストーリー
昭和天皇へのパチンコ発射事件などで知られる過激なアナーキスト奥崎謙三が、戦時中のニューギニア戦線の現場で起こった上官による部下殺害事件の真相を暴き責任を追及しようと、遺族とともにかつての上官宅などを次々とアポなし訪問する。35年以上昔のことに関係者は一様に口をつぐむが、次第に本物の地獄絵図が明らかになっていく。

 
 

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10
ドキュメンタリー史の傑作じゃないだろうか。奥崎氏の主張や手法にはまるで賛成できないけれど、彼が暴いていく真相こそが戦争の真の地獄だと感じる。美化された戦争が大量生産された現代に放り込まれた問題作。戦争犯罪の難しさ。時代の潮流の苛烈さ。被写体と製作者の距離感も明確で、ドキュメンタリーの本質(ヤラセ)を完璧に活用した問題提起となっている。秀作。

雑記:

  1. 日本A映画監督協会新人賞、ベルリン映画祭カリガリ映画賞、シネマ・デュ・レェール・グランプリ、報知映画賞優秀監督賞、等受賞
  2. 撮影期間は1982年から5年間。
  3. 疾走プロダクションは原監督が妻と結成したプロダクション。ほとんどの作品で共同作業。
  4.       

  5. 奥崎氏のと原監督の意図が噛み合っておらず、監督は相当苦労して撮影したようだ。

「買い物やめろ教会」の伝道 (What Would Jesus Buy?)

原題:
What Would Jesus Buy? (主ならば何を買いたもうや?)
年度:
2007
製作国:
アメリカ
配給:
ソニー・ミュージックエンタテインメント
監督:
ロブ・ヴァナルケメイド
キャスト:
ビル・タレン(ビリー師)他
ストーリー
Church of Stop Shopping(ストップ・ショッピング教会)と名乗る団体とその聖歌隊を率いる「ビリー牧師」が、アメリカの大量消費社会の「狂騒」に反対運動を展開するドキュメンタリー。最大規模の商戦であるクリスマス期間中に、「主はクリスマスにプレゼントを渡すなんて言っておられない」と全米中にゲリラ訪問。追い出されようと逮捕されようとクリスマスの本質が決して消費でないことを訴えて回る。

 

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6
大量消費社会に疑問を持つ人は多そうだけれど、こんな過激な手法でそれを訴える人がいるとは。ただ、クリスマスの本質が消費ではないことくらい恐らく多くのアメリカ人は気づいているけど、この「高価なプレゼント合戦」が楽し過ぎるか、あるいは心理的に自分だけ抜けられないだけではないか。アメリカ経済を大量消費が支えていることは事実なので、その理想を越えた現実的な経済の話をして欲しかったなあ。

雑記:

  1. 日本未公開
  2. プロデューサーのモーガン・スパーロックは、「スーパー・サイズ・ミー」など。
  3. 現在は、「Church of Life After Shopping」と改称
  4. 正式な牧師ではないため、あくまで一般的には、「社会活動家ビル・タレン」

FRIED DRAGON FISH

海外タイトル:
Fried Dragon Fish (国際=ドラゴンフィッシュのフライ)
年度:
1996
製作国:
日本
配給:
日本ヘラルド/エース・ピクチャーズ
監督:
岩井俊二
キャスト:
芳本美代子/浅野忠信/酒井敏也/OHGUCHI HIROSHI/光石研/田口トモロヲ
ストーリー
小さな探偵事務所にテスト導入されたデルタ社のデータベースアクセスPC(?)。そのオペレータとして派遣されたプーは、時価1000万円というドラゴンフィッシュ失踪事件に首を突っ込む。DBを駆使して行き着いた先には熱帯魚と共に暮らすナツロウが居た。彼は事件の黒幕トビタの部下のテロリストで、その部屋で「飼われ」ていた。

 
 

評価
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6
料理、というだけのキーワードで、脚本の鑑のようなストーリーと、お得意の大胆な色使いなど。やはりスゴい映像作家。ただ、全体的にこじんまりでパンチ不足。映像でなく(ニュースとかの)セリフに語らせるし。芳本に比べて、浅野の平板な演技。それが味なのかも。ところで野暮だけど、デルタ社のイメージ湧かないな。熱帯魚食べたい。

雑記:

  1. CX系深夜ドラマ「La Cuisine」の最終回スペシャル版として放映され、反響殺到
  2. サブタイトル「THOMAS EARWING’S AROWANA」
  3. 「ディーバ」を意識して制作したとのこと
  4. Charaの「Break Thease Chains」に触発され、主役は当初彼女に打診
  5. “F902″は本体マックでキーボードWin
  6. 原作では「スワロウテイル」の前編

絶対禁欲主義キリスト教徒アーミッシュの知られざる実態 (Devil’s Playground)

原題:
Devil’s Playground (悪魔の遊園地)
年度:
2002
製作国:
アメリカ
配給:
ソニー・ミュージックエンタテインメント
監督:
ルーシー・ウォーカー
キャスト:
ファロン・ヨーダー/ヴェルダ・ボントレーガー他
ストーリー
18世紀以降の文明をすべて拒否、あらゆる快楽を禁ずる絶対禁欲主義的キリスト教派「アーミッシュ」の実態に迫るドキュメンタリー。禁欲とはいえ、16歳になるとあらゆる快楽が一時的に開放され(「ルムスプリンガ」)、その後に自らの意思で教会に留まるかそれとも破門を前提に外の世界に飛び込むかの選択肢が与えられる。年頃の若者たちは酒・タバコ・セックス・ドラッグ・ドライブなどを一通り経験し、その後大いに悩むことになる。

 

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9
「刑事ジョン・ブック」以来、久々にガッツリとアーミッシュの生活を知る機会を得た。ある意味でこれはアメリカという国の懐の深さ。想像していたよりもユルい部分があることや、この一時的な「欲望開放期間」のことも知らなかった。彼らの悩みや葛藤というよりもむしろ、これがアメリカの一側面であるという事実を現代の文明社会が見ていないことに関心がある。西海岸とNY以外のアメリカはもっと世間が知ろうとするべきではないか。

雑記:

  1. 日本未公開
  2. 「悪魔の遊園地」とはキリスト教的な表現で、快楽の誘惑を指す
  3. アーミッシュはドイツ系だが、言語はペンシルベニアドイツ語であり、現代ドイツ語との意思疎通は難しい。
  4. メノナイト派も合わせて「アーミッシュ」と言われることがある