'点9' のアーカイブ

ドッグヴィル

原題:
Dogville (犬の家)
年度:
2003
製作国:
デンマーク
配給:
ギャガ
監督:
ラース・フォン・トリアー
キャスト:
ニコール・キッドマン/ポール・ベタニー/クロエ・セビニー/ローレン・バコール/パトリシア・クラークソン/ステラン・スカルスガルド/ジャン=マルク・バール
ストーリー
アメリカの架空の小さな町ドッグヴィルで起こる人間性のドラマ。床に街並みや家を表す白線と文字列を書き込んだ舞台風のセット。ギャングに追われ、この閉鎖的な町に逃げ込んだ美しい女性グレース。作家志望のトムは彼女を匿い、町で受け入れるよう皆を説得。ドッグヴィルの人々を手伝いながら次第に心を通わせるグレース。だが、やがて人々のエゴがあらわになり始める。

 

評価
コメント
9
名作。多くの実験的手法が賛否あるだろうが映画的虚飾を排したドラマとして非常に高い芸術性。「傲慢」をテーマに繰り広げられるエグい人間性、それも「ダンサー・・」同様吐き気を催すレベル。そしてこのセットと人間の舞台性のなかで唯一の、しかも重要な役であるはずの犬が絵。この象徴。ドグマを推進する監督だと、虚構に喜怒哀楽する映画的手法が傲慢だと言ってる気さえする。

雑記:

  1. フォン・トリアー監督の「機会の土地アメリカ3部作」の初作。残り2つは「マンダレイ」「ワシントン」。
  2. 監督がベルトルトブレヒト「三文オペラ」(と劇中歌の「海賊ジェニー」)に触発された
  3. 真上から町全体を観るアングルは実際は156の別々の映像を組み合わせた映像
  4. エンドクレジットの犯罪や貧困のスチール群は、「American Pictures」という写真集より
  5. 撮影はスウェーデン。N・キッドマンがスウェーデンに向かう際、15年ぶりに商用機を使った。

縞模様のパジャマの少年

原題:
Boy in the Striped Pyjamas, The (ストライプのパジャマの少年)
年度:
2008
製作国:
イギリス/アメリカ
配給:
ディスニー
監督:
マーク・ハーマン
キャスト:
エイサ・バターフィールド/ジャック・スキャンロン/ベラ・ファーミガ/デビッド・シューリス/アンバー・ビーティー
ストーリー
ベルリンのナチス将校の子ブルーノ、8歳。父の強制収容所所長への昇進を機に空襲を避け収容所傍の新居に家族で越す。友人もいない環境で退屈したブルーノは禁止されていた裏庭に入り、皆が何故かお揃いの「パジャマ」を着た「農場」に着く。そこで同い年の少年と出会い友情が生まれる。収容所の意味もユダヤ人の意味も理解していないブルーノに転機が。

 

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9
罪なまでの無垢さ。この救いのなさがフィクション、、、いやまてフィクションじゃないぞと思い泣く。そして少年たちの運命とその家族の複雑な立ち位置に泣くが、次の瞬間には「感情移入ができた彼らだけ」の救いを望んでいた自分に絶望。収容所モノは鑑賞にエネルギーが要るが名作揃い。少年たち名演!

雑記:

  1. ドイツ女性の既婚の標は右手にバンド
  2. 映画内で言及はないが4つの火葬場があることからアウシュビッツ
  3. ロケはブタペスト
  4. ジョン・ボインの同名小説の映画化。世界的ベストセラー。

ザ・コーヴ

原題:
Cove, The (入り江)
年度:
2009
製作国:
アメリカ
配給:
アンプラグド
監督:
ルイ・シホヨス
キャスト:
リック・オバリー他
ストーリー
ドキュメンタリー。和歌山県太地町は伝統的な捕鯨地区。世界の水族館向けのイルカ供給産地としても有名。アメリカ人活動家リック・オバリーらはこの地で「隠密裡に」行われているイルカ漁に注目。イルカ漁の事実、その手法、水銀が多く含まれる肉を鯨肉と「偽装して」販売していること等を世界に訴えようと撮影禁止地区に忍び込み、隠された「事実」を告発する。

 

評価
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9
ドキュメンタリーとして良質。良い映画。撮影手法や一面的・断定的な視点には批判もあろうが、それらを含めて活動家なりの義憤に基づく問題提起。映画のテーマはイルカ漁や捕鯨そのものよりも「隠蔽」に重きがあり、地元や日本政府やマスコミは耳を傾ける必要。日本版テロップは不要と思った。「扇情的な」血の海には特に何も感じなかった。カンガルー映画、誰か作らないのかね。

雑記:

  1. アカデミー最優秀長編ドキュメンタリー賞
  2. 岩に偽装したカメラの製作にはILM系の企業が。
  3. 日本公開版は顔にボカシ。また、「別の統計もある」などのテロップ入り。
  4. 日本公開には抗議運動が起こり上映中止が相次ぐ。ニコ動で先行限定公開など話題に。
  5. 国際公開版に映画の最後で映画に登場する水産庁役人について”deputy of fisheries for japan fired in 2008″(解雇された)と記されている。しかし実態は通常の人事異動とのこと。日本公開版に記載なし。

カポーティ

原題:
Capote (カポーティ)
年度:
2005
製作国:
アメリカ
配給:
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
監督:
ベネット・ミラー
キャスト:
フィリップ・シーモア・ホフマン/キャサリン・キーナー/クリス・クーパー/クリフトン・コリンズ・Jr./ブルース・グリーンウッド
ストーリー
アメリカの現代作家トルーマン・カポーティの代表作「冷血」が執筆される過程を描く。カンザス州ホルカムで1959年に起こった一家虐殺事件をNYタイムズで知ったカポーティは現地に取材へ。現場や関係者を丹念に回るうちに2人の若者が逮捕される。既に有名人のカポーティが彼らのひとりペリーに接見し話を聞くうち、犯人との間に信頼が芽生える。

 

評価
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9
F・S・ホフマンの演技がとにかく際立つ映画。人道主義者の仮面をかぶった作家のエゴを隠さないある意味「冷血」なカポーティの鉄の職業意識を見事に描く脚本も素晴らしいが、それをかすませるホフマン。伝記映画という地味なジャンルで脚色美などの映画的な巧さが詰まっている佳作。ともかく未読が多すぎた。読もう。

雑記:

  1. 作品賞・監督賞を含むアカデミー5部門ノミネート。主演男優賞(F・S・ホフマン)受賞。その他各国賞多数受賞。
  2. T・カポーティの誕生日である9/30に公開。全米は2005年。日本は2006年。
  3. 「冷血」は、「ノンフィクション・ノベル」という新たなジャンルを拓いたといわれる代表作
  4. 2006年秋にはもう1つのカポーティ映画「Infamous」も公開(トビー・ジョーンズ/サンドラ・ブロック)。題材も同じ「冷血」。
  5. 36日間で撮影。

おいしいコーヒーの真実

原題:
Black Gold (黒い黄金)
年度:
2006
製作国:
イギリス/アメリカ
配給:
アップリンク
監督:
マーク・フランシス/ニック・フランシス
キャスト:
タデッセ・メスケラ他
ストーリー
ドキュメンタリー。全世界で1日20億杯が消費されるというコーヒー。石油に次ぐ巨大な市場を持つ貿易商品でありながら、生産者である農家は価格下落による貧しい生活。エチオピアの農協連合を束ねるタデッセ氏は世界を飛び回り、生産者に対する適切な利益配分と自国農家への補助金を撤廃するよう訴える。

 

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9
一面的な情報の謗りはあるだろうが名作。フェアトレードの基本。一杯のコーヒーが語る真実。世界の仕組み。グローバル資本主義の闇の部分。そりゃそうだ。全ての人が全ての情報にアクセスし参入規制と参入障壁のない社会などあり得ない。補助金に守られた生産国に勝てる訳がない。貿易の勉強を決意。「援助より公正な貿易の場が欲しい」というアフリカ首脳発言が印象的。

雑記:

  1. サンダンスで話題に。日本で上映予定がなかったがアップリンクがこぎつけた。
  2. タデッサ氏に農協の仕組みを教えたのは日本、という情報も。
  3. 製作に3年。
  4. コーヒー農家がやむなく転作する麻薬「チャット」は、禁酒のイスラム世界で需要が高い。多くの先進国では非合法だが日本は規制対象外。

NINE

原題:
Nine (9)
年度:
2009
製作国:
アメリカ/イタリア
配給:
角川映画/松竹
監督:
ロブ・マーシャル
キャスト:
ダニエル・デイ・ルイス/マリオン・コティヤール/ペネロペ・クルス/ジュディ・デンチ/ニコール・キッドマン/ケイト・ハドソン/ソフィア・ローレン/ステイシー・ファーガソン
ストーリー
ブロードウェーミュージカル「NINE」映画化。著名な映画監督のグイドは新作「イタリア」の脚本が全く進まない。周囲から押し寄せる期待の大きさや最近の凋落ぶりへの容赦無い指摘にどん底になり現場から逃げ愛人に走るなどする。悩むグイドを訪れた救世主のはずの妻は、グイドの短絡さに愛想を尽かす・・・。

 

評価
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9
気に入った。D・デイ・ルイスの巧さとカッコよさが際立つ。「役者が揃った!」って叫びたくなる脚本運びのウマさ。豪華な役者の影でなにげに印象的なライティングやカメラが光ってるし、歌もかなり良い。映画人の不器用さをメタ的に幾重も表現。そしてM・コティヤール、知りませんでしたが宜しく。ミュージカルも良さそうだけど映画も良い。

雑記:

  1. F・フェリーニ「8 1/2」をミュージカル化した「NINE」の映画化。ややこしいw
  2. アンソニー・ミンゲラが途中で脚本を引き取ったが、途中で死。遺稿となる。
  3. 脚本家ストライキの影響をモロに受けた。何度か延期。
  4. 有名女優クラウディア役ははじめキャサリン・ゼタ・ジョーンズでオファー。ただ、あまり大きな役でないため降板。デミ・ムーアやジュリエト・ビノシュもオーディションを受けたが最終的にN・キッドマン(出産2週間後にリハーサル)
  5. 2009年に公開された映画でタイトルに数字の9を使った4本中の1つ。あとは「第9地区」など。
  6. 標題歌「Nine」は本作ではカットされた

30年間虐待を続けた神父とかばい続けた教会 (Deliver Us from Evil)

原題:
Deliver Us from Evil (我らを悪から救いたまへ)
年度:
2006
製作国:
アメリカ
配給:
ソニー・ミュージックエンタテインメント
監督:
エイミー・バーグ
キャスト:
オリヴァー・オグレディ他
ストーリー
ドキュメンタリー。1970年代後半から90年代にかけ北カリフォルニアで起こったカトリック神父による子供への性的虐待の数々。オグレディ神父は、信仰に篤い親を信用させた上で教区の少年少女へのいたずらやレイプを繰り返す。教区の司教は事実を隠蔽し、同神父を別地区に移動させるだけ。繰り返される悲劇。被害者やマスコミが声を上げたときには既に多くの被害者が。

 

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9
意義深いドキュメンタリー。「旧教」の名を体現する隠蔽体質、魂を救わない信仰への不信、故郷の地でのほほんと暮らすオグレディ。。。しかもこれが彼だけの問題ではないことは衝撃的。硬直した組織がいかに人間の本性をも固定化させるか。篤いはずのジョウノ氏の「神も信仰も人間が作り上げたもの」という叫びは実に重い。

雑記:

  1. 日本未公開
  2. 長編ドキュメンタリー賞ノミネート(06)。同年受賞は「不都合な真実」
  3. 聖職者による性的被害は、米国内だけで10万人を超える被害者を数える。しかも80%は沈黙してるとされる。
  4. ベネディクト16世は虐待を隠匿しているとして訴追されたが、ブッシュ大統領への嘆願により免訴された

ハート・ロッカー

原題:
Hurt Locker, The (傷ついた箱=”棺桶”)
年度:
2008
製作国:
アメリカ
配給:
ブロードメディア・スタジオ
監督:
キャスリン・ビグロー
キャスト:
ジェレミー・レナー/アンソニー・マッキー/ブライアン・ジェラティ/ガイ・ピアース/レイフ・ファインズ/デビッド・モース
ストーリー
イラク戦争下のバグダッド。米軍の爆発物処理特殊部隊は巧妙に隠された爆発物を探知しそれを慎重に処理する任務。事故死した前任者に代わり新しく赴任した新リーダー、ジェームズ二等軍曹は爆発物処理のスペシャリストだが、命知らずな任務遂行ぶりに部下のサンボーン軍曹らは振り回される。

 

評価
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9
名作だと思う。汗や息やプレッシャーなどを手持ちのコマ切れ映像で丹念につなぎスローの使いどころも巧い。「きっとこちらが正解なのだろう」と思わせる描写(ガンスコープ越しに命中観察できないので補佐必要!普通に生活してる横で戦争してる)など非常に巧い。アメリカ礼讃という批評は的外れだと思う。むしろ逆では。戦争の是非すら発せず。戦争映画に新視点。

雑記:

  1. アカデミー作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞、編集賞他。K・ビグロー女性監督賞初。その他各国賞。
  2. ヨルダンとクウェートで撮影。クルーのスケジュール調整に相当難儀。
  3. 2010年時点で、オスカー作品賞としては最も低予算の映画。

親愛なるザカリーへ (Dear Zachary: A Letter to a Son About His Father)

原題:
Dear Zachary: A Letter to a Son About His Father (親愛なるザカリーへ:息子に宛てた父についての手紙)
年度:
2008
製作国:
アメリカ
配給:
ソニー・ミュージックエンタテインメント
監督:
カート・キューン
キャスト:
アンドリュー・バグビー他
ストーリー
ドキュメンタリー。彼を知る誰しもが異口同音に「良いヤツ」「愛すべき男」と語るアンドリュー。そんな純朴な青年が殺された。幼馴染であり親友のカートは、彼の死後生まれたザカリー向けに、見ぬ父である生前のアンドリューを知ってもらうビデオを作り始めた。彼の死に関わったと思われる元恋人でありザカリーの母親シャーリーはカナダの司法制度に守られる。

 

評価
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9
これは良質ドキュメンタリー。あまりの結末に衝撃を受けた。途中から映画の目的を見失う訳だが、だからこそ前半インタビュー部分の登場者たちの本音度が明らかに。そして、「殺人容疑者が保釈」という理解に苦しむ制度の存在を知った。「先進国」にもいろいろ考え方がある。編集は独特だけど巧いと思った。

雑記:

  1. 日本未公開
  2. カート(監督)は、全ての収益を「アンドリュー基金」に。

名もなきアフリカの地で

原題:
Nirgendwo in Afrika (アフリカの名もなき地で)
年度:
2001
製作国:
ドイツ
配給:
ギャガ・コミュニケーションズ
監督:
カロリーヌ・リンク
キャスト:
レア・クルカ/カロリーネ・エケルツ/メラーブ・ニニッゼ
ストーリー
第二次世界大戦直前、祖国ドイツでのナチスの迫害を逃れて英植民地ケニアのロンガイの農場で暮らすことになったユダヤ人一家。ヴァルターとイエッテルの夫婦は慣れぬアフリカでの暮らしに戸惑い、時に諍う。幼い娘レギーナは異国の暮らしに順応し、現地の料理人オウアや子供たちとともにたくましく成長する。

 

評価
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9
良い映画。違いにこそ価値がある。陳腐な箴言のようでいて、人の諍いのほとんどはそれを忘れてしまうことに原因があるのだ。夫婦のすれ違い、言葉の壁、文明差、文化や死生観の違い、そして、同国人なのに「よそ者」として逃げなければならない事実。そんな大人の事情をよそに、レギーナの屈託ないたくましさはどうだ。2人とも撮影現場ではさぞ才覚見せたんだろうな。

雑記:

  1. アカデミー外国語映画賞
  2. 原作シュテファニー・ツヴァイク。自伝。
  3. 監督C・リンクは「ビヨンド・サイレンス」(96)「点子ちゃんとアントン」(00)
  4. ドイツ語、スワヒリ語、英語